【対談】002「EVと日本の電力事情の今後 芝浦工業大学電力システム研究室x峰村電気商会」

芝浦工業大学
藤田 吾郎 教授


電力システム研究室教授
学長補佐

峯村 崇

株式会社峰村電気商会
代表取締役 社長

 
 

峯村:今回のテーマは、電気自動車、evの充電インフラ、それらが今後どうなっていくかっていうことですね。 電気自動車用の充電器の設置数は年々伸びていますけれども、急速充電と普通充電を比較すると普通充電の方がよく伸びていて、急速需要はあまり伸びていない。次世代自動車インフラ整備事業予算の推移というグラフを見ると、2014年は300億円あった予算が2016年には25億円まで下がってしまい10分の1以下に下がっている。年々下がり続けて2020年には8.9億円になってしまっていると。これはどういうことなのでしょう。

峯村:電気自動車が流行らないからってことですかね。それとも、、、?

藤田:これは別予算に振り分けられて統合されている可能性もあるので、ちょっとこれだけ見ても判断はつかないかなと。でも、これだけ予算投じているのに身の回りに充電器が増えてないっていう感覚はまず間違いないと思います。

峯村:電気自動車用の充電器がないと電気自動車も普及しないし、電気自動車が普及しないと 充電器も普及しないという悪循環に入っていますよね。で、私、この前、韓国に行きました。釜山に行ったらほとんど電気自動車。電気自動車の充電スポットが目に見えてすごい。なんかもう、インターネットの世界からポンって出てきたような、漫画から出てきたような、こういう緑色のかっこいい充電ステーションがあって。 駐車場ごとにあっちこっちにあるっていう・・

藤田:自動販売機とかポストとか、そんな感じ?

峯村:まぁ、そんな感じに急速充電とか充電器のかっこいいのがポンってあって。

峯村:しかも韓国自国の電気自動車ばかりですね。向こうではジェネシスやキア。日本で言うとトヨタみたいな。

峯村:釜山では電気自動車に乗ると補助金がついて、高速料金が無料とか、時間帯では半額になるとか、色々優遇されているからみんな電気自動車一択だね、と現地のドライバーが話してました。ランニングコストも安いし、どんどん政府がそういう計画をたてると消費者は電気自動車を選んでいきますよね。

藤田:日本もこういうインフラ整備事業と車両の導入に関する助成金と両方やってるけれど上手く回っていないというのが現状かな。

峯村:まぁ、あとは住宅にどんどん充電器取り付けていけばね。地方は結構土地広いんで。

藤田:都心で困っているのが充電器を設置する場所も無い、マンションだとマンションのどこに置くのって話も出てきて、お金をどうやって取るのかっていうのがあって。

峯村:あと工事も難しいと。。

藤田:その点考えると、地方はスペースもあるし戸建ても多いので充電設備が増える機運 は地方の方が高いということが考えられるけれども、じゃあ、これを上手く活用して自分の車だけに使うんじゃなくて他の人にも貸す。充電器とか駐車場そのものも含めて貸す。貸すという言い方よりもシェアリングをするという考え方が一つあげられるかなと。

峯村:そうですね、土地があればこそ出来ることですしね。

藤田:で、このケースの場合は目的地のほか、経路上にも必要そう。経路では必要になりそうなら急速充電で、お金を多少払ってでも充電したいところです。

峯村:テスラの考えも同じですが、充電器設置には大きく二つの考え方があります。ひとつは経由地充電。目的地に到達する間に充電が必要な時に行う充電です。この場合は急速充電が選ばれます。みんな早く目的地に行きたいからですね。二つ目は目的地充電。目的地についてしまえば車を駐車してあとはお酒飲んだり、おいしいもの食べたり、温泉に入っている間に。次の日の朝までにゆっくり充電してくれていいので、急速充電は必要ないんですね。単相200Vで30Aでもあれば十分すぎる。バッテリーにも影響が少ないしそれで十分。

工事も簡単だし。急速充電になると、どうしても高電圧でキュービクル置いてっていう形になって費用も何千万もかかる。

藤田:うん、何百万も電気設備の投資も必要になってくる。

峯村:目的地で低圧の単相200Vでよければ工事費は数十万、もしくは数万から数十万で済むよね、と。

藤田:設置者からすると自分の家に設置したものをシャエアリングできたら非常にポテンシャルが高い。

峯村:だから、もう逆に将来、各戸建ての家の上に必ずソーラー乗っけてシェアリング用の充電器設置しなさいって政府が方針つけちゃっても面白いですね。

峯村:あとは、電気自動車乗っている人は高速料金無料とか半額だよとか、そういうのがあるとどんどん進んでいくんじゃないかと思いますよね。韓国や他の国でもやっていますし。

藤田:まぁ、あとエネルギーの考え方もだんだん変わってきて、重厚長大な設備を作って発電所から送電するっていうやり方から、需要地の方でなるべく発電をするという考え方に変わってくると、その太陽光発電と充電器がセットになって家庭に設置されるというのは、あと20年、30年するとそれが標準になるんじゃないかな。

藤田:一般家庭のインフラというと、今までは電気とガスと水道で、今後はそれに加えて自家発電と使う方の充電器、この5点セットが21世紀の半ばぐらいにはいってくるんじゃないか。そんなかっこいい話をすればいいんだよね。

峯村:それ、いいですね。

峯村:二酸化炭素排出量から考えても、上越にあるようなJERAの大規模発電から出てる二酸化炭素が一番ですからね。結構自動車の排ガスが一番Co2出してるんだ!という方がいますけど、実際自動車が出してる二酸化炭素なんてたいしたこと無いですよね。じゃあ、マイクログリッド化して、要は太陽光を乗っけて、先生がさっき言われた5点セットを各家庭に設置して少しでも大規模発電を抑えていくっていう方が環境にもいいし、税金の使い方もいいかもしれないですよね。発電事業を作って整備して運営して、それから送電、配電…もう全部考えていくと莫大な金額が、、、。

藤田:もちろん、それをこれまでみんなで負担するっていう考え方で言ったけど、その中に競争力は働いていないので。本当にこれが適切なのかっていうのは誰も判断できない。

峯村:そうですよね。

藤田:道路の整備費と同じで。

峯村:大規模すぎます。だけどみんなのインフラ。だから難しいですよね。国がやっていたもの民営化するっていうことなので。

峯村:最後に、今後日本では電気自動車化していきますか?

藤田:うん、するでしょう。しないと世界にも乗り遅れる。ただ、大型車がちょっと難しいかなと思っていて。去年、清掃事業者のトラックの電気自動車化の研究をやったんだけど、その蓄電池を積むことによってかえって乗せられる容量が小さくなっちゃって。しかも、まだ近距離しかまわれない。まだまだもう10年必要なんだなって。

峯村:あれですよね、俺がテスラで引っ張ればいいじゃん、そっちのほうが数値いいんじゃないの(笑)って言ってたやつですよね?あとはバスとか・・日本もちょっとはありますけど、、、中国はもちろん韓国も電気バスですよ。全部電動化がものすごい進んでいて。日本はこれだけインフラが進んでいて住みやすい国なのになんで自動車だけそんなに電動が進まないんだっていうのは本当に訳が分からないんですよ。その原因は、毎年、夏になると電力逼迫です、冷房を抑えて下さいとか、もう常に9割近くまでいっちゃってるわけじゃないですか。その辺はどうなんですかね。

原発増やすって言うと、やっぱりみんなの風当たりも強いし、かといって、ろうそくの生活にもどれるかっていうとそうでもないし。

藤田:電力会社でもそこらへんは将来的な方針を持っていて、電気自動車を普及させるだけじゃなくて大きな充電設備としても活用しようと。それによって周波数調整のためのマージンを確保するって考えている。

峯村:電力会社のほうでも将来的にはそうなると?それを見込んだ作戦は一応立てているということですか。

藤田:そうですね。

峯村:みんなで今後の電力事情を明るくしないといけませんね。勉強になりました。今日はこんな感じにしますか。ありがとうございました。

藤田:ありがとうございました。